大森靖子の歌について

 
 大森靖子の「TOKYO BLACK HALL」は、二〇一六年三月に発売されたアルバムに収録されている。この曲を聴いていて印象的なのは、「地獄、地獄、見晴らしのよい地獄」のフレーズである。あきらかに、この世の空気感を素直にとらえて歌にしたら「地獄」の歌詞が出てきてしまうのは、やはり大森が、この世に何か地獄めいたものを感じてしまっているからだろうと繰り返し聞きつつ私は考えたのだが、もしかしたら、私のほうこそ今の世間を地獄と感じ、そのどうしようもない地獄感を抱きつつもどうにもならず身動きできないから、「地獄」のフレーズに過剰なまでに反応し、それを歌詞にしてしまう大森とは何なのかと考えてしまうのかもしれない。